世界に誇る「水の山」プロジェクト ABOUT "MIZUNOYAMA" PROJECT
「水の山」コラム
#014 萌木の村(ROCK)
八ヶ岳ブルワリーで水を活かしたビール造りを学ぶ
地域に関わる人が北杜市の水と山の恵みを深く知り、その将来を考えることで、「水と暮らすサステナブルなまち北杜市」の実現を目指す取り組みとして始まった、世界に誇る「水の山」ユースアイデアプロジェクト。今年度も、北杜市内にある3つの高校(山梨県立北杜高等学校、北杜市立甲陵高等学校、学校法人帝京大学帝京第三高等学校)と水の山パートナー企業が連携して活動を進めている。11月6日には、今年度2回目の企業視察が行われた。
広大な敷地に広がる萌木の村
八ヶ岳ブルワリーで水を活かしたビール造りを学ぶ
萌木の村は、標高1200mの清里高原に広がる複合観光エリア。約1万坪という広大な敷地にナチュラルガーデンが広がり、ホテル、レストラン、メリーゴーラウンド、体験工房、オルゴール博物館など点在している。
萌木の村の原点でもあるレストランROCKの前に集合した高校生たち。広報室の五味愛美さんによる施設概要の説明から企業視察が始まった。
レストランROCKは、1971年に喫茶店として開業され、現在は看板メニューのROCKビーフカレーをはじめ地元食材をふんだんに使った料理を提供する人気レストランで、クラフトビールを醸造する八ヶ岳ブルワリーを併設している。
オープン前の店内では、ビールの仕込み作業の真っ最中。独特の良い香りが漂う中、分刻みで進む作業を見学しながら、醸造担当の飯野さんからビールができるまでの工程を教えてもらう。
大麦麦芽(モルト)、ホップ、そして水というシンプルな材料から作られるビールにとって、いかに水が大切なのかを知り、感心した様子の高校生たち。搾りたて熱々の一番搾りの麦汁を試飲させてもらうと、「甘酒みたい」「トウモロコシみたいな味がする」「甘くておいしい」「独特のおもしろい味がする」といった声が聞こえてきた。
続いて、3種類のモルトの食べ比べと、2種類のホップの香りを体験。モルトやホップに実際に触れる貴重な体験になった。
次に案内されたのは、地下にある工場。巨大なタンクが並ぶひんやりとした空間で語られる、萌木の村でいかにして八ヶ岳の水を活かしたビール作りをしているかといった話に、真剣に耳を傾ける高校生たちの姿が見られた。
ビール醸造で出た麦芽かすを、
ナチュラルガーデンの土壌づくりや食品に再利用。
萌木の村の中で起きている資源の循環に感動
ビール工場の後に向かったのは、ナチュラルガーデンズMOEGI。無農薬・無化学肥料で管理している、自然のままの庭園だ。栄養源は、ビール造りで出る栄養価が高く食物繊維が豊富な麦芽の搾りかす。普通なら産業廃棄物として廃棄するところ、ここでは落ち葉と混ぜてホクホクの腐葉土を作り、庭を作っているという。秋から冬にかけてのこの季節は、刈戻しの時期。ガーデンスタッフが忙しそうに働く姿が見られる。
庭に入ることはできなかったが、ガーデン担当の木内さんからの「ここは、イギリス人ランドスケープデザイナー、ポール・スミザー氏の監修のもと、14年前から作ってきた庭です。八ヶ岳の石を集めて石垣を作り、麦芽かすと落ち葉混ぜて作った腐葉土で土壌を整え、はるか昔から清里に生えていた山野草を再生させてきました。また、石垣をコンクリートで固めていないため隙間があり、そこにトカゲや蛇など、様々な生き物が住み着いていますし、無農薬無化学のため様々な蝶も生息していて、それらを餌とする野鳥も沢山訪れる、生物多様性のガーデンになっています。今は冬で全体が黒っぽくなっていますが、春にはニョキニョキと勢いよく新芽が出て、いきいきとしたガーデンになるんですよ。一番きれいな時期は5~6月なので、ぜひ足を運んでみてください」という説明を受け、生徒たちは目を輝かせていた。
その後、八ヶ岳の地下水を採水している場所を見学し、再びレストランROCKへ。ビール醸造で出る麦芽かすのさらなる活用を目指して開発されたという、麦芽かす入りのパンとクッキーを試食させてもらった。生徒達からは、「クッキーはちょっと固いけれど、噛み応えがあって私は好き」。「パンもふわふわで、麦芽かすが入っていると聞かなければわからないくらい。違和感もなく、とてもおいしいです。」と、大好評だった。
率直な疑問が飛び出した、見学後の質疑応答
Q:「『萌木の村』という名前の由来は何ですか?」
A:「草木が芽を出すことを「萌える」と言いますよね。これは、人間で言うなら青春の時、みなさんのように、これから人生を愉しむという時期に当たります。そんなことから、木が萌える場所=人生を愉しむ場所という意味を込めて、『萌木の村』と名付けました。ちなみにROCKは、前のお店があった場所にあった大きな石と、音楽のロックを掛けて名付けたそうです」。
Q:「木内さんと五味さんにとって、『萌木の村』とはどんな場所ですか?」
A:「私はここへ勤めて40年、一番長かったのは隣のホテルで25年ほど勤めました。ホテルの仕事は大変でしたが、お客様と一緒に、釣りに行ったり、登山をしたり、山へ入って木の実を取ってきて調理をしたりと、深くおつきあいができることがとても楽しかったです。そして、その当時お泊り頂いたお客様が、30年経った今も私を訪ねてくださる。来年定年を迎えますが、それが一番これまでやってきてよかったと思えることですね」(木内さん)
「私は、いろんな年代のスタッフがいて、それぞれ学びながら仕事ができているということがすごく魅力的だと思っています。例えば今日会った醸造メンバーも、常に研究をしながら新しいビールを作っていますし、試食してもらったパンやクッキーも、ホテルのパティシエールが試行錯誤を繰り返して開発した新商品です。そんな風に、誰もが学びながら成長しながら働ける場であり、磋琢磨しながら支え合っている一つの村のような面白い場所であり、私自身もそういう所にやりがいを感じながら働いています」(五味さん)
視察を終えて
帝京第三高校生徒
「以前から興味のあった、北杜のきれいな水を、企業がどのように活用しているのかということを、ビール造りなどを通して学ぶことができ、とても勉強になりました」。
甲陵高校生徒
「ビールを作る過程で出る麦芽かすを、産業廃棄物にせず再利用し、ナチュラルガーデンの肥料にしたり、パンやクッキーなど新しい商品を開発したりして、この萌木の村のなかで循環させていることに感動しました。木内さんと五味さんのお話から、スタッフ一人ひとりが萌木の村に対する誇りを持って働いているということが伝わってきて、だからこそ、ここには魅かれるものがあるんだと感じました」。
帝京第三高等学校 仲山敏先生
「学校生活のなかで地元のことを知る機会はあまりありません。こうした機会を頂くことで、子どもたちは学校の勉強では得られない貴重な学びを得ると共に、自分たちのまちの素晴らしさに気づくことができ、それがいずれシビックプライドの醸成にもつながっていくと考えています。また、本校の場合は県外の生徒も多く在籍しています。普段は寮生活をしている彼らにも、自分たちが学んでいるまちのさまざまな姿に実際に触れることで愛着が育まれ、地元に戻った際に北杜の話をしたり、成長した時に北杜に戻ってきたり遊びに来たりするきっかけになってくれたらという期待もしています」
萌木の村 五味愛美さん
「北杜市の子どもたちには、北杜市にいる間にこのまちの魅力を知って欲しいと思っています。特に、これから将来を決める高校年代の子どもたちが地域の魅力を知ることで、進学や就職で一旦外へ出たとしても、北杜の魅力を伝えてくれたりする存在になってくれたり、いつか北杜に戻って来たりしてくれることが期待されますし、実際にそうなったら嬉しいので、萌木の村としては、こうしたプロジェクトに全面的に協力したいと考えています。
また、水の山パートナー各社は、世界を見据えて発信したり、商品を送り出したりしており、『ここで働いても魅力がたくさん作れるんだよ』ということを、ぜひ学生さんたちに伝えていきたいと考えています。今日は、私どもの北杜の水を活かしたビール造りやいくつかの施設を見学してもらいましたが、それらを通して、北杜の魅力や仕事の楽しさなどを感じてもらえていたら嬉しいですね」。
八ヶ岳南麓清里の憩いの郷 萌木の村
- 住所
- 山梨県北杜市高根町清里3545 萌木の村
- 電話番号
- 0551-48-3522
- 定休日
- 年中無休
- 営業時間
- 10:00〜18:00(5月〜11月) 10:00〜17:00(12月〜4月)